<第49号>中国だけを見ていても、日中関係の答えは出ない

「日本は中国とどう向き合うべきか。そして、沖縄は中国とどう向き合うべきか。」

私は今、この問いに対する答えを真剣に考えなければならない時期に来ていると思います。

中国との関係を考えるとき、私たちは安全保障の問題だけに目を奪われてはいけません。

まず直視しなければならないのは、日本と中国が極めて深い経済関係で結ばれているという現実です。

2024年の日中貿易総額は44兆1,680億円に達しています。

中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本の貿易総額の20.1%を占めています。

政治や安全保障をめぐって日中間に厳しい問題が生じても、この巨大な経済関係が簡単になくなるわけではありません。

そして、これは日本だけの話ではありません。

米国と中国も、安全保障や先端技術などをめぐって厳しく対立する一方で、巨大な経済関係を維持しています。

2024年の米中物品貿易は、米国側の統計で約5,836億ドルに達しました。

だからこそ米中関係を見るときにも、安全保障だけではなく、貿易、投資、産業、技術、資源といった経済的な国益が極めて大きな意味を持っていることを理解しなければなりません。

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を掲げています。

その米国が、自国の国益を基準として外交上の判断を行うことは当然です。

実際、2026年9月の米中首脳会談では、貿易や台湾など現在の米中間の問題が議論される一方、両首脳は第二次世界大戦当時、米国と中国が同盟国として共に戦った歴史にも言及しました。

日本では「日米同盟は揺るぎない」と繰り返し言われます。

もちろん、日米同盟が日本の安全保障にとって極めて重要であることに疑いはありません。

しかし、同盟国だからといって、米国があらゆる局面で日本と全く同じ判断をするとは限りません。

国家は最終的には、それぞれの国益に基づいて行動します。

だからといって、私は「日本は米国から離れ、自立すべきだ」と言いたいのではありません。

むしろ逆です。

日本が目指すべきなのは、日米関係をさらに強くすることです。

ただし、それは日本が一方的に米国に依存する関係ではありません。

米国にとっても「日本との関係を失うことはできない」と思われる国になることです。

日米関係を軍事同盟だけではなく、経済、投資、産業、技術、教育、文化、人的交流まで含めた、より深く、より相互依存的な関係へと発展させる必要があります。

その第一が、相互投資です。

2024年末の日本の対米直接投資残高は約121.9兆円に達しています。

日本企業は米国に工場を造り、雇用を生み、米国経済に大きく貢献しています。

一方、米国から日本への直接投資残高は約10.6兆円です。

ここには大きな差があります。

これからは日本企業が米国へ投資するだけではなく、米国企業にも、もっと日本へ投資してもらう。

半導体、AI、エネルギー、金融、医療、観光、研究開発など、さまざまな分野で米国企業が日本に投資し、日本の経済成長から利益を得る構造をつくるのです。

日本企業が米国経済に必要であり、同時に米国企業にとっても日本市場が必要である。

そうした関係をつくることが、日米関係をさらに強くすることにつながると私は考えます。

第二は、若い世代の交流です。

日本で学び、日本で働き、日本社会を理解する米国人をもっと増やす。

同時に、米国で学び、働き、米国社会を深く理解する日本人をもっと増やす。

留学生、研究者、起業家、若手経営者、自治体職員、文化人など、あらゆる分野で人の交流を広げていくべきです。

米国を知る日本人と、日本を知る米国人が増えれば、日米関係は政府間だけのものではなくなります。

人と人、企業と企業、大学と大学、地域と地域が結び付いて初めて、国家間の関係は本当に強いものになるのだと思います。

そして第三に、日米関係を安全保障だけで考えないことです。

日本が「米国に守ってもらう国」、米国が「日本を守る国」という関係だけでは、長期的に強い同盟関係をつくることはできません。

もちろん、日本自身が防衛力を整備することは必要です。

しかし同時に、経済、技術、外交、文化、教育など、日本自身の力を高めることも重要です。

台湾をめぐる緊張が高まるほど、「だから米国に頼るしかない」という発想だけになってはいけません。

日本自身が力を持ち、その上で日米同盟を強化する。

私は、この二つを同時に進めることが重要だと思います。

そして、その先に日中関係があります。

日中関係だけを切り離して、「中国とどう付き合うか」と考えるのではありません。

まず日本自身が経済力、技術力、外交力を高める。

そして日米関係を、軍事だけではなく、経済、産業、技術、人材まで含めた強い関係にする。

「日本が米国を必要としている」のと同じくらい、「米国も日本を必要としている」。

そこまで日米関係を進化させることができれば、日本の外交的な選択肢は広がります。

その上で、中国と対話すべきところでは対話する。

経済協力すべきところでは協力する。

そして、譲ることのできない国益については明確に主張する。

必要なのは、感情的な「親中」でも「反中」でもありません。

日本自身の国力と外交力を高め、米国からも中国からも「日本という国を軽視することはできない」と認識される国をつくることです。

私は、それがこれからの日本外交に必要な発想ではないかと思います。

そして、この問題は沖縄にとって、より重要です。

中国に地理的に近い沖縄だからこそ、中国との関係を安全保障だけで考えるのではなく、経済、観光、文化、人的交流を含めた、より大きな視点から考える必要があります。

安全保障上の備えは当然必要です。

しかし、安全保障上の緊張が高まれば高まるほど、同時に対話と交流の回路を持っておくことも重要になります。

沖縄が日本の安全保障の最前線であると同時に、日本とアジアを結ぶ経済、観光、文化、交流の拠点となる。

私は、この二つは決して矛盾するものではないと思います。

「日本は中国とどう向き合うべきか。」

「沖縄は中国とどう向き合うべきか。」

その答えは、中国だけを見ていても出てきません。

まず日本自身が力を持つ。

そして、日米関係を「一方的に依存する関係」ではなく、「互いに必要とする関係」へと進化させる。

その上で、中国とは対話し、協力し、主張すべきことは主張する。

そして沖縄は、安全保障だけではなく、経済、観光、文化、人的交流という力を使って、中国を含むアジアとの関係を築いていく。

私は、そこにこれからの日中関係、そして沖縄と中国との関係を考える一つの道があると思います。

株式会社 沖縄ファースト政策研究所
所長    下地 幹郎