<第11号>ガラス細工の中の日中関係:いま求められる現実的外交
中国は日本にとって長年にわたり貿易総額第1位の相手国で、2024年の日中貿易総額は44兆1,680億円と、中国経済の動きは日本経済にも大きな影響を及ぼします。
安倍晋三元総理大臣は2016年、訪日外国人旅行者(インバウンド)6,000万人・訪日外国人旅行者消費額15兆円を目標にする「明日の日本を支える観光ビジョン」を打ち出し、その3年後の2019年には「新たなクールジャパン戦略」で外国人消費額目標50兆円を打ち出しました。
2024年のインバウンドを国別に見ると、一位は韓国で881.8万人(23.9%)、二位が中国で698.1万人(18.9%)と、非常に大きなシェアを占めています。
さらに、中国のインバウンドは「爆買い」という言葉を生み出したほど、日本経済に大きな影響を与えていることは間違いありません。
日本と中国は歴史的に厳しい時代がありましたが、戦後80年が経った今でも、両国間においてはガラス細工をつくり上げるような繊細な関係が続いています。
近年は、台湾が近代化し、国力をつけている中で、「一つの中国」を望まない台湾の政治勢力が台頭していることも事実です。
それに対し中国は、台湾へ軍事的な圧力をかけることで、「台湾の独立はあり得ない」「一つの中国しかない」という中国の考え方や存在感を世界に激しくアピールしているのです。
また中国は、アメリカとの関係においても、レアアースを盾にして、「中国とアメリカは二大大国だ」という世界に対するイメージづけも強かに行おうとしているのです。
いま世界経済において、GDP約2,846兆円で世界第2位の中国を無視して、自国の経済成長をつくり上げていくということは不可能に近く、ガラス細工の中国との関係においては、中国のプライドを守りながらもわが国の主張を明確にするという、あの右寄りの安倍晋三元総理大臣が行ったような互恵関係を続けていかなければいけないのです。
安倍総理は8年間の在任中、対中貿易収支は3兆5212億円の赤字から1.3兆円の黒字へと成長させ、貿易総額に占める中国の構成比は23.9%と過去最高を記録しました。
靖国参拝をやめることなく中国に対して厳しい態度で臨んでいた安倍総理が中国との貿易を伸ばしたという、マジックのような政治が現実政治には必要ではないでしょうか。
だからこそ安倍総理は、「台湾有事は日本有事」という、中国が許容できる言葉の範囲で表現していたのです。
「日本有事」という言葉は日本の法律には存在せず、台湾有事は日本にとっても大変なことだということを表現しているだけであります。
しかし、高市総理の「台湾有事は存立危機事態」という表現は、台湾有事の際、集団的自衛権を発動して中国と戦うということが、「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」に根拠づけられてしまいます。
これは、あまりにも踏み込んだ発言であり、ガラス細工を自らハンマーでたたき壊した発言だといっても過言ではないのです。
「経済成長をあくまでも、どこまでも追い求める。日本をもう一度、世界のてっぺんに押し上げる」と総裁選に臨んだ高市総理ですから、日本経済の成長に中国経済が影響を与えることは十分に認識しているはずです。
中国に進出している日本企業は約1万3,000社、2020年度の現地法人の合計売上高は240.9兆円ということからしても、日中が政治的発言によって両国の経済にマイナス要因をつくらないことが、私は常識的な政治戦略だと思います。
高市総理が自らの発言を撤回することは、支持層からの批判を受けるだけに、それはできません。
それならばどうするか?
私は、中国は「汚い首」発言の薛剣在大阪総領事を新たなポジションに異動させ、日本は安保三文書の改訂を緊急課題としないというメッセージを送りながら外務大臣をはじめとする外交チャネルによる直接対話を行うことで、一つの落としどころとすべきではないかと考えます。
いまわが国は、経済対策、特に物価高対策が最優先課題であり、総理自らの発言が日本経済に大きな影響を及ぼしている以上は、丁寧に丁寧を重ねた対応が必要です。
株式会社 沖縄ファースト政策研究所
所長 下地 幹郎


