<第17号>市場の熱狂と国の現実、そのズレに向き合う年

2026年最初の取引となる大発会を迎え、東京株式市場では日経平均株価が大きく反発しました。

年初の取引で一時前営業日比1,200円超の上昇となり、心理的節目とされる水準を回復したことは、市場参加者に一定の安心感を与えたといえるでしょう。

しかし私は、この株価の動きをもって日本経済全体が力強く回復していると見るのは、やや楽観的過ぎると考えています。

近年の株価上昇は、AI関連や半導体といった特定の成長分野に資金が集中した結果であり、個人消費や中小企業の収益改善といった「足腰の強い経済」を示す指標が十分に伴っているとは言い難い状況です。

実際、日本の実質賃金は長期にわたり伸び悩み、総務省の統計を見ても、物価上昇を賃金上昇が下回る局面が繰り返されています。

とりわけ庶民の暮らしに直結する食料品やエネルギー価格の上昇は深刻で、消費者物価指数は前年比で2%前後の上昇が常態化しています。

この背景にあるのが、長引く円安です。

為替相場は1ドル=140円台から150円台といった水準で推移する円安・ドル高の流れが続き、輸入物価の押し上げ要因となっています。

歴史的に見ても、1980年代後半や2010年代後半に見られた円安局面では、企業収益が改善する一方で、家計には物価高という形で負担が転嫁される傾向がありました。

今回も同様に、為替を起因とする物価高は簡単には収束しないと考えられます。

さらに、日銀がマイナス金利政策を修正し、段階的に金利を引き上げた影響は、これから本格的に表面化してくるでしょう。

長期金利が1%前後で推移するだけでも、資金力に乏しい中小・零細企業にとっては借入負担が重くなります。

1990年代のバブル崩壊後を振り返れば、金利上昇と信用収縮が投資を冷え込ませ、景気回復を遅らせた経験があります。

今回もまた、金利が投資の引き締め要因として作用し、株価の勢いが実体経済に波及しにくい状況が続く可能性は否定できません。

株価高、物価高、金利負担、そして円安という複合的な圧力は、政府が大型の補正予算を編成したとしても、短期間で環境を一変させるほどの効果を持たないと見るのが現実的でしょう。

さらに、日米とも政府支出と金融緩和により、国家の債務残高が膨張しているという、より大きな構造的問題があります。

足もとの景気は、仮に効果があったとしても、未来の国富を先食いすることによって作られているのです。

外交・安全保障の面でも、不透明感は強まっています。

アメリカではトランプ大統領が再び強硬な姿勢を前面に押し出し、「力による平和」という言葉が現実味を帯びる場面が増えています。

歴史を振り返れば、冷戦期や2000年代初頭の中東政策においても、軍事力を背景とした秩序形成は一時的な安定をもたらす一方で、長期的には新たな不安定要因を生んできました。

こうした中、日本を取り巻く東アジア情勢も決して楽観できません。

日中関係は依然として緊張をはらみ、中国と韓国が歴史認識を巡って連携する動きは、日本にとって外交上の課題を一層複雑にしています。

安全保障、経済、外交のいずれの分野においても、アメリカへの依存度が高い現状は、日本の国力を中長期的に見て脆弱にする恐れがあります。

戦後日本は、日米同盟を軸に成長を遂げてきましたが、同時に自主的な戦略構築を後回しにしてきた側面も否めません。

重要なのは「脱アメリカ」ではなく、「脱・過度な依存」です。

自国の強みや個性を生かし、主体的に選択し行動する国家としての姿勢が、これまで以上に問われる年になるでしょう。

2026年は、誰もが予想しない出来事が起こる可能性を秘めており、目先の株価や一時的な数字に一喜一憂するのではなく、歴史の教訓と現実のデータを踏まえ、慎重かつ柔軟に戦略を練る姿勢が求められています。

こうした時代だからこそ、国の都合に振り回されない地域の自立が、これまで以上に重要になるのです。

株式会社 沖縄ファースト政策研究所
所長    下地 幹郎