<第2号>続・オリオンビールはどこへ行く?

今朝の朝刊に、オリオンビールが株式売り出し価格の仮条件を1株あたり800円~850円に決定したという記事が掲載されました。

1株あたり800円~850円というのは、目論見書に記載のあった1株あたり770円から、最大で10%以上の値上げとなります。

また、売り出しの株式数はオーバーアロットメントを含めると、最大で2492万株と発表されていましたが、こちらも3178万株まで引き上げられました。

発行済株式の77%に相当し、1株850円とすると約270億円の売却収入となります。

値上げができた上に販売数量まで増加する見込みであるところ、利益相反をものともしない野村證券の営業力はさすがであるといえます。

以上の結果として野村、カーライルともに売り出し後は保有比率が5%未満となり筆頭株主ではなくなる見込みです。

残存する株式の売却禁止期間(ロックアップ)も6ヶ月と短く、さらに、「値上げをしても想定より需要がある」にも関わらず、新株発行を行うこともなく持分をより多く売る決定を見るに、両者が長期で保有する見込みは低いと言えます。

なぜでしょうか。

それは、買収後に不動産を売却し現預金をほぼ吐き出し切ってしまっており配当等では大きな回収が見込めず、かつ事業の成長による株価の値上がりが期待できないと考えているからではないでしょうか。

もちろん、株主としてのオリオンもカーライルも「ファンド(投資事業有限責任組合)」ですのでファンドの投資家に約束した満期があり、満期までに保有資産を現金化して投資家により多くの資金を返却する義務があります。

高く売れる時に売り切るのは資本市場においては経済合理的な行動です。

しかし、もしオリオンビールMBO後に事業が変革され成長の軌道に乗っており、満を持しての上場ということであれば77%も売り出すでしょうか。

成長企業、いわゆるベンチャーの上場では近年、上場後の成長も見据えてIPO時に新株発行することはもちろん、創業者やファンドは株を大量には売却せず長期保有する傾向が高まっています。

その行動自体が、「上場ゴール」ではなく成長企業として上場することのサインとして捉えられています。

上場後の企業価値向上に自信があれば、形は変えても保有を継続する方法を考えるのではないでしょうか。

実態は、「IPO後の保有を正当化できるほどには価値が上がる期待ができないため、なるべく早く売り切ろう」としているように見えます。

さらに、オリオンビールは上場後の成長が見通しづらいどころか酒税特別措置の失効という財務上のリスクを抱えています。

それにもかかわらず、特別措置失効時の損益への影響額は今のところ公表されていません。

これは、株価にネガティブな情報を不完全な開示にとどめ、IPOに際して売却できるだけ売却しようとする姿勢は、内部情報を持たない投資家と株式市場に対して不誠実でありコーポレートガバナンスに問題があると言えます。

また、今回の売出が価格・規模共に正当なものであったとしても、親引け先には金融機関や県内企業がほとんどを占め、県民や沖縄県が含まれておりません。

従業員持株会への割当も僅かなものにとどまっています。

それどころか、新聞記事には20%以上が外国人株主に割り当てられることが報道されています。

酒税減免で多額の支援を受けてきたにも関わらず、県民をないがしろにして良いのでしょうか。

オリオンビールのMBOから上場までの流れは、あまりにも社会性を欠いているように思えてなりません。

株式会社 沖縄ファースト政策研究所

所長 下地 幹郎